本講義は『天台四教儀』の末疏である冠導『天台四教儀集註』をテキストとして用い、天台学の大綱のみならず仏教学の広汎な知識を学ぼうとするものである。
『天台四教儀』は諦観師(~971)によって著わされ、天台の教観二門・五時八教の教義を簡要な文で該羅されている。そのためか、天台学入門の書とされているものの、その読解は容易ではなく、蒙潤師(1275~1342)の『天台四教儀集註』などその註釈書は数多い。その『天台四教儀集註』を大宝守脱師(1804~84年)が龍谷大学の前身である本願寺大教校に招かれて講義を行い、これを提山暢堂師がまとめられたのが本テキストである。
講義は、在院生に担当を割り振り、担当者が漢文を書き下し、その意訳を試みる形式で進め疑問点等を議論し、各々の理解を深めている。その学びは天台学に留まらず、漢文の訓読法から引用経論の意図や仏教学全般の知識に至るまで、その考察が求められる。
宗祖は9歳から29歳の20年間にわたり、比叡山において勉学に励まれた。また、『教行信証』には天台学の影響が指摘されている。本講義は、その天台学の基礎を学びつつ、宗学研鑽の一助とすることを目的としている。
『本典』(教行信証)について、『本典研鑽集記』を基礎的資料として用い、真宗先哲の講録を参照しつつ、本典の全体像を的確に把握するために、引用部分も一通りは目を通すが、まずは宗祖の御自釈部分を丁寧に読んでゆきたい。また最近の本典研究についても考察し検討を加えてゆきたいと考えている。
本講義は『観経四帖疏』(「玄義分」「序分義」「定善義」「散善義」)の内容について、真宗先哲の講録等も参照しながら丁寧に講読し、「古今楷定」とよばれる善導教学の全体像を把握していくことを目的とする。
そして、善導教学が元祖や宗祖に如何なる影響を与えたかを綿密に考察する。
宗学院本科における「本典講録の研究」は、毎週水曜の午後、演習形式で班ごとに担当してもらい、漢文を読んで書き下し文をパソコン入力し、引用されている諸文献の書名・巻数・頁数等を記し、『宗学院論集』に掲載していくという形で講義が進められている。その成果は、「本典講録集」として、『宗学院論集』59号(昭和62年11月発行)から、毎年『宗学院論集』に掲載している。
平成19年度からは、
①智暹『教行信証文類樹心録』(1760年頃成立)(『真宗全書』三十六巻所収)
②玄智『顕浄土真実教行証文類光融録』(1790-1793)(『真宗全書』二十四巻所収)
③芳英『教行信証集成記』(1820-1823)(『真宗全書』三十二巻所収)
の原漢文の三講録を考究することになり、現在は「信文類」の解釈に取り組んでいる。
本講義は、本格的に本典を研鑽していこうとする研究者に対し、その研究材料を提供するのが主たる目的である。そのためには漢文を正確に読むことが求められ、三経・七祖・宗祖・列祖のお聖教やその他の経論釈に関する知識はもとより、江戸期に刊行された真宗典籍の写本・刊本に関する知識、あるいは外典の漢籍にいたるまで、その内容に関する広汎な知識が必要とされる。